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延命草は薄毛の救いになるのか

自毛植毛手術を受けた後に現在使っている養毛剤をそのまま使用して良いかと質問を受けることもあります。一般に市販されているもので、今まで使用して湿疹やかぶれなどのトラブルが無いようでしたら、そのままお使いになられても問題ないとお答えすることが多くあります。

普通、養毛剤の有効成分は、研究成果に基づいて配合されているものですが、天然成分となると、長年の実績が優先されて、科学的な作用が充分に確認されないまま使われているというものも少なくありません。このことは漢方薬でも同じところがあり、養毛剤の有効成分の中で解明されないまま使われてきたものとして多いのは生薬由来の成分です。

 毛乳頭を活性化させる成分の発見

そんな生薬由来の有効成分ですが、この間(2021年1月8日)、そんな生薬について興味深いニュースが伝えられました。

 

近畿大学薬学総合研究所と加美乃素本舗の研究チームが、脱毛の症状を改善する新たな養毛剤の開発を目的として、加美乃素本舗が55年間にわたって有効成分として使用してきた延命草のエキスの作用を確認する研究を行いました。

その結果、延命草のエキスには毛乳頭細胞を活性させる効果があることが突き止められ、その主成分であるenmein(エンメイン)という化合物に毛乳頭細胞の増殖促進、増殖シグナルの活性化、成長因子の産生亢進の3つの効果があることが明らかにされています。

毛根には毛母細胞と毛乳頭細胞があり、毛母細胞が細胞分裂によって毛髪を作り出し、毛乳頭細胞が成長因子を産生して毛髪を太く成長させています。毛乳頭細胞は毛髪の付け根の毛乳頭に存在する細胞で、ヘアサイクルを調節する成長因子のFGF−7を産生しています。FGF−7(Fibroblast Growth Factor-7)は人間のタンパク質の一種で、発毛の司令塔となっています。薄毛になっている部分はFGF−7が減っていて、毛乳頭細胞の活性化が薄毛を解消することが判明しています。

延命草はシソ科の多年草のヒキオコシで、その名の由来は平安時代の僧侶の弘法大師・空海が道端で病に苦しんでいる旅人に草を噛ませたところ、病人が起き上がって元気になったという逸話から名付けられたものです。延命草は苦味が特徴で、この苦味成分のもとになっているのがenmeinなどの化合物です。

研究チームが初めに行ったのは20種類の生薬のエキスを毛乳頭細胞に添加培養して、その増殖率を測定することでした。その結果、延命草のエキスに毛乳頭細胞の増殖を促進させる効果があることが確認されました。この効果を指標にして、延命草のエキスを分子レベルまで分離・精製して、含有成分を明らかにするとともに、延命草のエキスに含まれるenmein(エンメイン)、isodocarpin(イソドカルピン)、nodosin(ノドシン)、oridonin(オリドニン)という化合物が毛乳頭細胞の増殖を促進する成分であることが確認されました。

さらに主成分のenmeinを用いて、作用メカニズムについて詳細な機能性解析が行われました。その結果、毛乳頭細胞にenmeinを投与することによって、細胞の増殖を制御する生体内シグナル伝達(増殖スイッチ)の一つである「Akt/GSK-3β/β−cateninシグナル伝達経路」を活性化させることがわかりました。また、毛髪の成長と脱毛の周期であるヘアサイクルの成長期を延長する血管内皮増殖因子の毛乳頭細胞からの分泌を亢進させる効果も確認されています。

この結果から、男女を問わず、さまざまな原因によって起こる薄毛に効果があることがわかり、薄毛のタイプに関わらず使えることから、新たな養毛剤の開発につながることが期待されています。

毛乳頭細胞は成長期に特に活性化する

毛髪の成長は常に続いているわけではなくて、1本の毛髪に注目すると成長と脱落を繰り返しています。毛髪が伸び続ける成長期には毛乳頭が活発に活動して毛髪が成長します。この期間は3〜5年です。次の退行期は毛乳頭の活動が弱くなり、毛球部が萎縮して徐々に小さくなる時期で、この期間は2〜3週間となっています。それに続いての毛乳頭の活動が休止する休止期が2〜3か月間あり、その後に脱毛します。

脱毛する前には毛乳頭が再び活動を始めていて、新しい毛髪の元が作られて、ある程度の大きさになると古い毛髪が押し上げられて、自然に抜けていきます。このヘアサイクルにおける脱毛は単に抜けてしまったということではなくて、次の成長が始まった結果ということです。

脱毛したときに、どれくらいの成長が起こっているのかが毛髪の健康的な成長には重要なことで、毛乳頭細胞が活性化されていれば、次に成長する毛髪が元気な状態になり、しかも毛乳頭細胞から分泌される成長因子のFGF−7には毛髪を太くする作用もあることから、太い毛髪を成長させることができるようになります。

毛髪が以前に比べて細くなってくることが薄毛の始まりの兆候と考えられていますが、これは毛乳頭細胞の働きをみると、当然のことといえます。

毛乳頭細胞の働きは血流不足や男性ホルモンの影響などによって低下していきます。その変化が起こりやすいのは、薄毛が多い頭頂部や前頭部の毛髪は活性化が低下しやすくなっています。それに対して後頭部の毛髪は毛乳頭細胞が活性化しやすく、他の部分は薄毛が目立ってくるようになっても、前と変わらずに盛んに働いています。

自毛植毛で移植するのは元気な後頭部の毛髪で、毛乳頭細胞の働きがよい部分です。だから、移植後も後頭部の毛髪と同じ勢いで成長してくれるということです。

 

参考)生薬「延命草」に毛乳頭細胞を活性化する効果を発見
https://newscast.jp/news/9471096