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植毛 大阪 親和クリニック 自毛植毛コラム 【公式】

毛髪を輝かせるキューティクルの仕組み

毛髪のキューティクルは外側を覆っている組織のことで、毛髪をコーティングすることで内部の成分や水分が抜け出さないようにして、ツヤやハリのある状態を保つ役割をしています。キューティクルはケラチンタンパク質という角質化したタンパク質で、毛先に向かってウロコ状に重なり合っています。

キューティクルを作り出す酵素がわかった

摩擦や紫外線、洗髪のしすぎなどによってキューティクルは傷みやすく、一度傷むとなかなか元の状態に戻りにくくなっています。そこで、新たな治療薬や美容製品、育毛剤などの開発のためにキューティクルを作り出す酵素について研究が進められてきました。多くの研究が進められる中で、茨城大学の研究グループが「毛髪キューティクル形成時に働く酵素の詳細な構造を解明」というテーマで研究発表を行いました。

毛髪は頭部を保護するための重要な器官の一つで、キューティクルはS100A3タンパク質が豊富に含まれていて、これがキューティクルの質を大きく左右しています。このタンパク質に含まれているシトルリンというアミノ酸は、S100A3タンパク質の中にもともと備わっていたアミノ酸のアルギニンがPAD3という酵素によって変換されたものです。シトルリンは体内に含まれていて、血管を丈夫にして、しなやかにする作用があり、スーパーアミノ酸とも呼ばれているものです。

S100A3タンパク質のシトルリン化がうまくいかないとキューティクルがうまく形成できなくなり、健康な毛髪を保つことができなくなります。また、年齢を重ねていくと毛髪の質が低下していきますが、これは老化によって毛髪の中のシトルリン化したS100A3タンパク質の量が少なくなっていくことが影響していると考えられています。

“櫛でとかせない毛髪症候群”という毛髪がハリガネのようになる病気がありますが、これはPAD3の遺伝子の変異に起因していることが知られています。

タンパク質の中のアルギニンをシトルリンに変換する化学反応を促進する酵素は5種類ありますが、毛髪にはPAD1、PAD2、PAD3の3種類があります。このうちPAD3だけは他の酵素とは違って、S100A3タンパク質に4種類あるアルギニンの1種類を選択的にシトルリン化しています。PAD3によってシトルリン化したS100A3タンパク質は構造と性質が大きく変化することが知られていて、それが毛髪を角化させています。

今回の研究では、ヒト由来のPAD3の遺伝子を大腸菌に入れて、目的のタンパク質であるヒトPAD3を多く得ることから始まりました。この成功によって、PAD3の性質を利用した操作ができるようになり、PAD3を精製して純度を高め、単結晶を得ることができました。

PAD酵素はカルシウムによって活性化されることから、カルシウムのある結晶とカルシウムのない結晶を作り、PAD3の活性がなくなる変異体の結晶でもカルシウムの有無の状態のものが作られました。その結果、PAD3の状態によって結晶が作られる条件が異なっていて、作られた結晶も違った形をしていることがわかりました。

研究成果がQOLを向上させる

これらの結晶でX線結晶構造解析を行い、活性型、不活性型など6種類のPAD3の立体構造が明らかにされました。また、類似酵素のPAD4とS100A3タンパク質を試験管内で反応させて分離したのちに、たんぱく質の中のシトルリンを検出しました。さらにシトルリン化したS100A3タンパク質のアルギニンの種類も確定されました。

その結果、PAD3の構造や性質が、毛髪に存在するPAD1やPAD2よりも、毛髪に存在しない類似酵素のPAD4とよく似ていることが示されました。

カルシウムを結合するとPAD3は構造変化を起こして、活性に関わるアミノ酸の配置が完成することが確かめられました。また、PAD3の構造の中にカルシウムが結合する部位は5か所あって、5つのカルシウムイオンが順番に結合して、最後にカルシウムが結合する部位も明らかにされました。最後の1つが結合することで活性化することがわかり、これらのことからカルシウムによってスイッチが入るPAD3の活性化機構の提唱につながりました。

また、PAD3の反応を抑える化合物(阻害剤)が結合している構造や不活性な状態の構造も確認され、類似酵素との違いが明らかになりました。この化合物を結合する部位にはPAD3だけに見られる構造的な特徴である空間があり、この空間を利用することでPAD3の選択的な薬剤を作ることができる可能性が高まりました。

仕組み的には難しい話が続いてしまいましたが、この研究によって毛髪のキューティクルが作られる仕組みがわかり、毛髪の質で悩む人たちのために養毛剤だけでなく、新たな治療薬への応用も可能となりました。まだ商品化されるまでには期間がかかりそうですが、研究の進み方を知ることで、期待をもって待つことができるようになりました。

毛髪の質が高まることは、自毛植毛のような画期的な薄毛解消法によるQOL(クオリティーオブライフ)を、さらに推し進めてくれることも期待されています。

 

参考)毛髪キューティクル形成時に働く酵素の詳細な構造を解明
https://www.ibaraki.ac.jp/news/uploads/2021/05/PressRelease_peptidylargininedeiminasetypeIII.pdf